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藤江民作品集

藤江民は、話しかけようとする姿勢が絵に必要だと考える、その必然性を持っている。絵を能動的で自立したものにしたいという意思が、彼女の制作を支えている。ひょろりと愛らしい《立て絵》が、その切実さを背負い、伝えにやってくる。

自らの身体の描く動きそのものの可視化として、筆と顔料と画面の接面に瞬間的に生まれる筆触を個々に生け捕りにしようとする。それはとても具体的な、個別的な行為と言ってよく、藤江の重要な独自性の在り処がここにありそうだ。

 

筆触の転写によるモノタイプ大画面を、藤江民の代表作として、まず挙げていいと思う。70年代末から1980年代を通して作成された大作群は、1990年代に和紙を使うようになって一層豊穣さを得ていく。

藤江民が作品タイトルを使って《使う絵》を唱え始めたのは、《立て絵》より以前、1990年代後半頃のことになる。この言葉も、藤江の仕事にふさわしかった。大判の和紙をつないで描きあげた大作絵画を巻いて運び、街中で広げて吊り下げたり、竹林に立たせて設置したりしたのは、壁面で待っているのでなく、見る人との出会いを求め自ら出かけていく絵の試みだった。
光田由里(美術評論家)

 

藤江はかつて富山県立近代美術館問題の渦中にあって、それを大浦個人の問題ではなく、自分自身の問題として引き受け、支援し、その一翼を担い、今なおその不屈の精神を保ち続けているのである。

同じ展覧会の出品者として、長らくこの問題に深く関与し、自分自身の問題として真摯に取り組んできた。藤江を理解するうえで、「ʼ86富山の美術」を巡る一連の出来事は避けて通れないのである。
島 敦彦(金沢21世紀美術館館長)

 

「自分の内面を表現する」ということではなく「見たことのない絵を『発現』させたい」という言い方のほうを選びたい。

藤江 民

著 者:
藤江 民
定 価:
¥3000(税込:¥3300)
発行日:
2020.04.10
ISBN:
978-4-86627-082-1
判 型:
A4
頁 数:
143 頁
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目次

自在さを伝えにいく絵画 光田由里(美術評論)… 6
口絵…13
構築されない奥行を求めて 島 敦彦(金沢21世紀美術館館長)…94
略歴…100
関係文献…140