富山の出版社 本づくりなら 桂書房

富山の小さな出版社「桂書房」。富山での自費出版、本づくりならお任せください。

勝山敏一による随筆集です。桂通信図書目録の冒頭に収録されています。

No.64 何かに向かう途中を生きて

 当たり前だが、人々はどんな瞬間も。何かに向かう途中を生きている――感銘を刻む映画であった。女性監督ケリー・ライカートの『ウェンディ&ルーシー』、リーマン・ショックの二〇〇八年作。  家を失くしてスマホも持てない…

No.63 これから美容院に行きます

 見出しはキエフに住む女性が叫ぶように言った言葉。二月二十五日の朝かその前夜だった。とうとうロシアが三方向から侵攻を開始――そう伝えたテレビが、ウクライナの人々にインタビューしている。四十代に見えるその女性がまっすぐ視聴…

No.62 土地人民、請け取り申すべく候

 右の見出しは一八七二(明治五)年三月、廃藩置県で「新川県」開庁先となる魚津出張所へ出された達しの一節。この三年前の版籍奉還でいったん天皇に返された版図と戸籍を、十五日の正午、少し区画を整理した府県として改めて与える、そ…

No.61 江戸期のロックダウン「津止め」

 新型コロナ対策で、日本でも具現した都市封鎖。「外出自粛要請」に基づく、警官の監視のない近似的なものだが、筆者も二か月に及ぶ巣ごもり。江戸期の港町で始まった津止めという米価高騰を抑える都市封鎖(筆者の研究テーマ)がどれく…

No.60 あらゆるものは繋がりあっている

 ―八月三日、出品作への抗議にガソリンの携行缶を持ってお邪魔すると、最近の大量殺人事件を想起させる卑劣な脅しもあって愛知「表現の不自由展・その後」は中止となった……新聞ニュースに打ちひしがれ、私はランチを摂りに外へ出る。…