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No.6 いま、 地方出版は?

昨年暮に地方小出版流通センターから出た情報誌 『アクセス』 によれば、 10年目にして地方出版は今、 安定期に入りつつあるという。 社員3人以上、 月1点、 年間10点の刊行が一つの目安で、 多くの社がこれをクリアーしようとしているという。
これを読んで私は、 ヘェーと思った。 小社は社員2人、 昨年はちょうど10点の刊行だった。 うちは地方出版の平均像にまで成長したんだなァ、 と感心するような気持だった。
地方出版の雄といわれる長野県の郷土出版社と銀河書房、 福岡県の葦書房、 秋田県の無明舎出版のようなところは、 年商1億から2億円を誇っている。 私は別に大きいことがいいことだとは思わないし、 大きい所はそれゆえの苦しさもあることを知っているから、 うらやましいとは思わない。
しかし、 小から大へと成長していく力が彼らにあったのに比べ、 私は、 ここまで5年間、 40点の刊行に精一杯で、 人を増やしたり大企画に挑戦したりする余力がまったくないのだ。 やはり、 出版社の命ともいうべき企画力の差が、 こんな結果になっているのだろう。
たとえば、 長野の郷土出版社では 『長野県歴史大年表』 B5判の2巻セット800頁余の大冊を13000円の定価で、 なんと5000部売ったという。 人口が富山県の倍だということや、 文化度の違いを考慮に入れても、 小社で一万円以上のものを2000部売ることなんか夢のまた夢だが、 企画がよければ不可能が可能になるという実例にちがいない。
長野県は特別なんだ、 とよく言われる。 本好きが多いだけでなく、 研究者の層も厚く、 『信濃』 という郷土雑誌が、 日本的な学術誌の一つに数えられている。 そして、 本屋さんも郷土関係の好きなお客さんをしっかり把握しているのだ。 おそらく長い歴史の積み重ねがあってそうなったのであり、 その意味では、 長野は特別なんじゃない。 富山でもそういう積み重ねを今からはじめればいいではないか。
私は昨年、 『越中資料集成全十四巻』 の予約者の内、 県内の人の方が少なかったという経験を味わって、 しみじみと郷土史研究志向者の層の薄さを感じた。 しかし、 この資料集成は今後の礎となる出版だ。 今までプロの研究者しか見れなかった史料を一般に開放していくことなのだから。 ここはガマンなのだ。 史料だけでなく、 地方出版そのものが未来の再生産のためにあるのだから、 そう自分に言い聞かせる正月だった。 (1988年1月20日 勝山敏一)