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No.13 あらゆる事柄に賛否両論が…

◎私は忘れないだろう、 人を殺し合う湾岸戦争でさえ、 人々の意見は賛否両論だったことを。 なぜか、 あらゆる事柄に賛否がある。 小社も色々なことに賛否を問われる。 最近では本の 「あとがき」 で著者の方が編集者の名前を出してお礼を述べられるのはどうなのか。 一年程前から小社では編集者へのお礼は原則としてお断りしてきた。 『出版ニュース』 の投書欄だったかと思うが、 本のあとがきはあくまで読者を相手にすべきで紙上を借りて編集者にお礼を述べるなど、 傲慢だ-という趣旨の意見を読んで、 そうか、 そんなふうに考える人もいるのかと驚き、 社員たちと話し合って改めたのである。 しかし、 昨年刊行した 『図書館と郷土資料』 が早々と再版になったとき、 著者の瀬先生から初版のときに削除されたこの件をもう一度復活したいと申されてとても心苦しい思いで再びお断りした。 その後、 新刊のある本のとき、 編集者の一人からこの件に疑義が出て、 もう一度徹底的に話し合うことになった。 著者の方のお礼文は結局は読者への心温まるメッセージである。 他社でこんな原則を持つところはない。 著者の方の気持ちを踏みにじってまですることではない。 やはり、 改め直そうという結論だった。 今度の 「女たちの昭和」 から著者の方のお書きになるままとした。 瀬先生には申し訳なくお詫びの外ない。 この議論の中から、 本の出来上がりまで携わるあらゆる人の名前を奥付で標記しようという意見も出てきた。 編集者だけが著者の方からお礼を言われるのは心苦しいし、 各部門の責任と誇りを慎ましく標記するのは許されることと思う。 一冊の本ができるまでなんと多くの人の手にかかっていることか。 読者の方のご意見を賜ればと思う。
◎昨年夏に刊行した日本海魚類図鑑は今年の2月日本経済新聞に大きく取り上げられて、 アッという間に品切れになった。 100人以上の方のご注文をお断りせざるをえなかった。700部しか作らなかったことを地方小出版流通センターの川上さんにも少なすぎるとお叱りを受けた。 始め1000部と思ったが、 だんだん怖くなって (売れ残ったらどうしよう) 800部に落とし、 土壇場で700部に決めたのだが、 本当に部数を決めるのは難かしい。 作り過ぎた時よりも不足した時の方が悔しい。 売れないといっても2、 3年経てば在庫がいつか無くなり、 再版ということになるが、 再版したとたんピタッと売れなくなることも多いから、 どんなに経験を積んでもクリアできない神秘だ。 魚類図鑑の再版のメドもまだだ。
◎小社もいよいよ様々な社会問題を取り上げねばならない。 各種の差別のこと、 風化する公害のこと、 老人や教育や環境問題など、 行政や大企業批判が出てくるかと思うが、 記録にさえ取られない重要問題を黙って見過ごすわけにはいかない。 できるだけ客観的な視点を持ちたい。 難解な問題は賛否の両論を載せていきたい。 ある意味の覚悟を定めた。 最初は6月刊行の 『メディアに描かれる女性像』 で、 新聞や市町村広報紙などマスメディアにあふれる女性蔑視、 性別役割の固定化、 性的対象物扱いなどの性差別表現を具体的に例を挙げて検証し、 好ましい表現を提案もする本である。 県内在住の著者グループはこの活動で 「市川房枝基金」 を受賞している。
乞う、 期待! (1991年5月20日 勝山敏一)