富山の出版社 本づくりなら 桂書房

富山の小さな出版社「桂書房」。富山での自費出版、本づくりならお任せください。

No.45 「全ての人はお互い飯の種となり合っている」

ベーシック・インカムについて語る人はまだ多くない。 全ての人に無条件で基本所得を配分しようという構想。 病気の人にも老いた人にも口のきけぬ赤ん坊にも、 全ての人に一ヵ月ん万円を支給していく。 財源プランの一つはこう。 現在ある多くの福祉は、 支給対象が基準を満たすかチェックする必要があり膨大な数の公務員がそれに当たっているが、 無条件であればそれは不要、 その公務員費を回す。
この構想を知ったのはワーキングプアの存在に衝撃を受けた昨年。 私には社会改革の素晴らしい希望と目された。 ドイツなどでは真剣な話題になっているようだから、 すぐに日本でもと思ったが、 それから熱い話題にならない。 私は何か見誤ったのだろうか。
基本所得を全ての人に支給するから、 働かなくても何とか食べていけるようになるわけだけれど、 働かざるもの食うべからずという価値観はそんなに圧倒的なのだろうか―自分はそんなにお金が欲しいわけじゃない、 会社勤めしないでいきたいという人も結構いるのではと思ったけれど。
『「負け組」 の哲学』 の小泉義之氏は指摘する。 「いわゆる社会的弱者を資源として膨大な産業と専門家権力を作り出してしまった」 資本主義世界の支配層は、 権益を掘り崩される危機感をこの構想に抱いていると。 牽制したい者が、 うまい話に気をつけろとあちこち触れているのかもしれない。
資本主義のおかげで特定の誰かを飯の種にしないで済んでいると私は喜んできた。 それ故だろうか、 無能無力の人さえ含めて全ての人はお互い、 飯の種となり合っているとこれまでたびたび感じてきた。 この感じは構想とどこかで響き合っている気がする。 どこをどう回って、 この共鳴は生まれてくるのか。 シンプルだけど奥が深い構想―理解途上の私。 (2008年6月1日 勝山敏一)