富山の出版社 本づくりなら 桂書房

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No.3 丸三年たちました

昭和57年の12月、 久保尚文先生から 『越中中世史の研究』 の原稿をいただいてから3年がたちました。 その間、 刊行した書物はちょうど20冊になっています。 小社の事務所であるこのアパートの一室にはじめて入り、 一人でガランとした部屋に座りこんだ日のことを思い出します。 何もありませんでした。 お金も何も。 前に勤めていた出版社が倒産し、 それからは富山市の中田書店の外商マンとして勤めていました。 その頃、 径書房から出された季刊誌 『いま、 人間として』 に大きな感動をうけました。 意欲あふれる誌面、 創造的な出版人というのは、 傷ついた者の側に立って考え、 我身を捨ててもという覚悟のできた人のことかとショックを受けました。 私は、 前の出版社の倒産によって大きな被害をうけていました。 これで一生終りと思っていましたが、 径書房の出版を見守り、 その雑誌の拡販に力を注ぐうちに、 とうとう、 人に力を与えられるような出版をやろうと決意するまでになりました。 書店に退社願いを出しました。 家族に内緒です。 妻や母に再び大きな心配はかけられず、 書店勤めを装うために書店のような 「桂書房」 という社名にしました。 何の蓄えもなく、 金融機関から融資をうける才覚もなく、 断崖に足がかかったような出発でした。 幸い、 処女出版の 『越中中世史の研究』 はたいへん好評で、 半年ほどでほとんど売り切れてしまいました。 幸運だったとしみじみ思います。 その後、 次の企画もない私のもとに、 著者の方々のふしぎなつながりで原稿が少しずつ持ちこまれるようになりました。 どの本の著者の方々からも、 そして読者の方々からも暖かい励ましをうけました。 そして特に、 菅野印刷の方々には本当に助けてもらいました。 こんな私を信用していただき、 いい本を作りたいと情熱を燃やしておられるのです。 これからも迷惑をかけることは絶対にできません。 読者の皆さま、 執筆者の皆さま、 そして書物制作の現場にいらっしゃる皆さまに、 本当に御礼を申し上げます。 まだ3年、 今も蓄えのない小社ですが、 5年後、 10年後にも喜んでいただけるよう頑張りたいと思います。
桂書房代表 勝山敏之
今後ともよろしくお引き立ての程お願い申し上げます。 (1985年11月10日 勝山敏一)