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No.68 皆でオシッコ飛ばし、しよう!

 小社から上野千鶴子・山内マリコ共著『地方女子たちの選択』を出した。著者お二人に、女性と消滅可能性都市について本をお願いしたところ、行く末を担う当の地方女子の声を聞こうというご提案。富山県在住の女性14名にライフ・ヒストリーをインタビュー。見出しはそのお一人、五十代の方の語りの一節である。

 いつも近所の男の子を引き連れるガキ大将だったという「きょうこ」さん。四世代同居の農家に生まれた彼女は父母と祖母の、さらに祖母と曽祖母のいさかいを見て育って、妹弟をよくかばった。大学は県外だが、富山に戻ることは自然で、公務員となり、同郷の男性と結婚。彼の両親と同居に抵抗がなかったのは、暴力を辞さない怖い祖母に可愛がられて、祖母を憎むまでいかなかったといい、どんな人とも自分はうまく付き合えると万能感を育んでいたからかしれない。

 三人の子に恵まれるが、しかし、義母の厳しい目に晒されての子育て、顔色をうかがう辛い日々となっていく。何か一つ報告するのにも勇気を振り絞らねばならなかった。屋根のてっぺんに上がり、木に登り、村中を駆けまわって小崖に出会えば、瞬時、男女差を意識しないオシッコ飛ばしという新しい遊びを創案するヤンチャ娘だった彼女はいったいどこへ行ったのか。

たまっていく不満。ある時、義母の聞こえよがしのブツブツ批判を耳にし、彼女は「半分泣きながらワーって叫んで」しまう。イヤなことにノーを言う、その言い方は千差万別だが、爆発型は「それが最初で最後の抵抗」になりやすい。彼女は我慢の道をあゆむことに。

 ひるがえって、大卒時、彼女に故郷回帰を選択させたのは何か、想像してみたい。おそらくそれは、村野での自由と創造に満ちた遊び体験である。そこで養った一挙手、一投足から生きる力は湧いている。彼女は全てをあきらめたわけじゃない。定年後は大卒時の念願「子供の世話」の仕事をしたいという。

 選択といえば大きい語だが、時をかけて、人には微細な選択が無数に積み重なっているから、自身が驚くような選択はしようと思ってもできないな。