富山の出版社 本づくりなら 桂書房

富山の小さな出版社「桂書房」。富山での自費出版、本づくりならお任せください。

勝山敏一による随筆集です。桂通信図書目録の冒頭に収録されています。

No.59 元禄三年の米留め騒動が始まり。

 米騒動百年の今年七月、朝日新聞「天声人語」が富山人の意見を紹介した。富山県の米騒動は「米の一粒も奪わず、検挙者もいなかった。それなのに女房連が暴れ、米蔵を打ち壊したかのように語り継がれてしまった」、彼女らは米商に対し米…

No.58 うしろ指をさいておわらやる

 見出しは狂言「鎌腹」の詞章の一部。外泊ばかりして家のことは何一つしない夫に怒って妻が「打殺いてわらはも死にまする」と迫り、しまいに夫が鎌で腹を切ってみせようとする。この夫婦のケンカはしょっちゅうなので他郷の衆さえ笑いや…

No.57 静かに難じるような母の眼

お盆、父母の眠る墓に参った。手を合わせ瞑目して今年はいつもと違う母の顔、逝(い)く前日に見たあの顔が浮かんだ。 認知症を病んで施設に入り、末期は治療室に移った母。翌日に逝くと知らず「母さん」と、私は真上から正対して顔を覗…

No.56 「沖の殿様」というクジラ

 明治12年(1879)の「水産物取調(石川県)」は、江戸期を映す貴重な史料。そこに金沢城下町外港・金石の鯨の方言が「沖の殿様」と記されている。  4年後の水産博覧会記録がこの語について「鯨の群集する時は恐怖し、甚だしき…

No.55 「これこれ魚屋、魚があるか」

 人形浄瑠璃「呉越(ごえつ)軍談」の一節。呼びとめた侍女たちに魚屋は言い返す。「どなたもヘソはござんすか」「ヘソが無うて何としよう」「そんならこちも魚屋じゃもの、肴がなくて売るものか」。  一七二一(享保六)年、これを大…