富山の出版社 本づくりなら 桂書房

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勝山敏一による随筆集です。桂通信図書目録の冒頭に収録されています。

No.54 江戸期「風盆」の語を見つけて

今春、古文書に「風盆」の語を見つけた。おわら風の盆は元禄十五(一七〇二)年に始まったと『八尾町史』が文書を示さずに記すので、証を探していた。文書は寛政十二(一八〇〇)年「奉公人仕方帳」。農家に奉公する人の給金や労働時間を…

No.53 魚が小躍りするような泥の記憶

水田が不思議な仕掛けをもつことに初めて気づいたのは、一九六八年ころ、シロかきを耕耘機で始めた時だ。畦まで来て回転刃をもちあげUターンしようと大股に開いて踏んばったら、右足が田の中でズルーッと滑った。耕耘機にしがみつき、5…

No.52 モノをあげたりもらったり

昭和二十年代、農家の我が家の戸口にはよく乞食が立った。留守番少年の私は親のしていたとおり、米びつから生米を一合ほどすくった五合枡を物乞いの広げる頭陀袋の中に傾けるのを常としたが、ある時、よろよろと足をひきずる乞食が現れ、…

No.51 悲しみはけっして人に見せまい

八三歳の酒井キミ子さんの絵文集『戦争していた国のおらが里』には、克明な二八〇枚の「農」の絵が載る。全国紙は世界記憶遺産に指定された筑豊炭坑の絵のようだと紹介した。絵につくコメントも、ああ、そうであったと感嘆するのが多い。…

No.50 お昼にしようけ

大干ばつに襲われたアフガンの人々がある日、村を捨て食を求めて徘徊を始めるのを目撃された医師の中村哲さんの言葉「飢えた人は寡黙だけれど、決して絶望的な眼はしていない」。 飢え人が都市へ向かって徘徊するのは、江戸期の富山町で…