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過去の記事: 2022.9月

佐伯哲也のお城てくてく物語 第9回

カテゴリー:お城てくてく物語

佐伯哲也の お城てくてく物語

 

 

第9回 戦国時代のお化粧事情

 女性が美を競うのは、戦国時代も同じである。館跡を発掘すると驚くほど多種多様の化粧道具が出土する。ここでは庶民にいたるまで生活様式が判明している越前一乗谷遺跡を例にとり、戦国時代の化粧事情を見てみる。
 一乗谷で最も多く出土している化粧道具は、櫛である。素木のものや漆塗りのものなど様々である。シャンプーなど無かった当時、櫛で髪を梳くことで汚れを取っており、櫛払いもセットになって出土している。
一乗谷朝倉氏遺跡 簪(かんざし)も多く出土しているが、多くは飾りが少ない単純なものである。ロングヘアーだった当時の女性は、洗顔や食事のとき、邪魔になる髪を押さえつけるクリップのように使用したという。
 毛抜きは男女ともに必需品で眉毛を抜くために用いた。当時の化粧の重要ポイントは眉で、白粉で白く塗った上に、いかに美しく眉墨で眉を描くか、ここに細心の注意を払っている。毛抜きで眉毛を抜くなんて、ちょっと痛そうだが少しでも美しく見せようと、ガマンしていたのだろう。
 紅皿も多数出土している。紅花を粉末処理したものを、紅皿で水にとき、筆で唇に塗った。鏡は直径5~7㎝の銅製円鏡で、コンパクトな鏡である。柄がついていないことから携行用だったと考えられる。どこへ行くときでも持ち歩き、ヒマさえあれば化粧を直していたのであろうか。
 筆者がドンビキしたのはお歯黒道具である。男女とも黒く染めたが、特に結婚後の女性は必ず染めている。戦国期の女性を描いた絵図を見ても、歯を黒く染めたものが多い。歯が黒いとちょっと不気味な感じがする。
 お歯黒は、鉄錆と五倍子粉(ふしのこ)を合わせてつくる。あるイベントでお歯黒体験コーナーがあり、さすがに筆者は塗らなかったが、ちょっと舐めてみた。予想していたことだが、原料が鉄錆なので、錆臭くてたまらなかった。よくもまあ、こんなものを口の中に入れていたものだと感心したことを覚えている。結婚後の女性がお歯黒をしたのは、妊娠・出産によって鉄分が不足したためであろうか。健康サプリメントなど無い当時にとって、必要不可欠の化粧だったのかもしれない。
 世の中の男性は、女性がニッと笑った時、歯が真っ黒だったらドンビキするに決まっている。真っ白な歯が良いと思うのは筆者だけではあるまい。